発達障害で支障をきたしやすい物忘れの対策について紹介

普段生活をしていると物忘れをするケースが少なくありません。
特に発達障害ではそれが顕著で、仕事や日常生活といった場面で大きく支障をきたしています。

特にADHD(注意欠如・多動症)のタイプの発達障害では、より深刻なものになってしまうことも多いのが現実です。

ただ、欠陥と判断して放置するのではなく、自分や周囲が工夫して物忘れの対策をすることで、かなりのミスを減らして日常生活や仕事に良い影響を与えます。

そこで今回は、発達障害の物忘れについて解説しましょう。

 

発達障害と物忘れが出やすいADHDの解説

物忘れについて説明する前に、そもそも発達障害とは何か、さらに物忘れの特性がよりはっきり出やすいADHDとは何かについてみていきましょう。

 

発達障害とは?

発達障害とは脳の発達がアンバランスに進むことで起こり脳機能に関連する障害です。
近年では大きく次の3つに分類されています。

1・自閉スペクトラム症(ASD)
2・限局性学習症(SLD)
3・注意欠如・多動症(AD/HD、ADHD)

物忘れは特に3の注意欠如・多動症(AD/HD、ADHD)で起こりやすいとされています。
次の項目では、そのADHDについて解説しましょう。

 

ADHDとは?

物忘れが出やすいADHDとは、個人差があるものの一言でいうと不注意、多動性、衝動性が組み合わさった発達障害です。

不注意としては、集中できない、ガイドに従えない、課題や活動が順序良くできない、そして物忘れが挙げられます。

多動性は、きょろきょろ当たりを見まわしたり、静かに遊べなかったり、じっとしていられなかったりするのが特徴です。

衝動性は、極端なせっかちさです。
たとえば、最後まで話を聞けない、順番が待てない、割り込みをするといった攻撃的な一面を持っています。

こういった特徴のほか、極端な不器用さなども挙げられます。

ただ、これらのさまざまな特徴のなかでも特に物忘れは、ものをなくしてしまったり、活動内容を忘れてしまったりといったミスを引き起こすので、かなり深刻です。

これらに対して、トレーニングによる治療法や薬物療法による治療法が行われています。
ただし、現在使用されている薬物療法は幻覚などの副作用も出やすいため、投薬が慎重に行われている状態です。

そのため、主に後述する各種対策やトレーニングによる治療がメインに行われています。

 

ADHDはなぜ起こる

物忘れが著しい発達障害であるADHDはなぜ起こるのか、現在の研究では次のような原因が指摘されています。

・前頭前野の機能調節に偏り
・神経伝達物質の不足(脳内)

 

前頭前野の機能調節に偏り

前頭前野は大脳の前面にある部分を言います。

この部分では、視紅や判断の他、注意や計画、自己抑制、さらにコミュニケーションなど人間の社会性に重要な機能を担当しています。

発達障害のうち、ADHDの場合では前頭前野のコントロールが上手く行かずに物忘れを中心とした、先ほどの徴候がみられるようになると言われているのです。

 

神経伝達物質の不足(脳内)

人間には多くの神経細胞が連結し、あたかも木の枝のように密集しているのが特徴です。

さまざまな刺激や情報を伝っていく際に活躍するのがノルアドレナリン、ドーパミンといった活性させる物質、セロトニンなど抑制に働く物質である神経伝達物質です。

発達障害のうち、ADHDではこれらの神経伝達物質の量が少ないとされています。

これによって物忘れなどの状態をきたしやすいと考えられています。

 

発達障害の物忘れ対策3選

発達障害があっても次のような対策を立てることによって、物忘れの障害をある程度克服できます。

・スマートフォンのリマインダー
・ホワイトボードやメモの活用
・チェックリストの活用

 

スマートフォンのリマインダー

社会人であればスマートフォンなどを持っていると思います。
カレンダーのリマインダー機能を使うことで、物忘れがかなり減ります。

スマートフォンで今日何をするか表示されるので、それを見て活動することで物忘れをかなり減らせます。

 

ホワイトボードやメモの活用

物忘れのほか、マルチタスクが苦手なのが発達障害のADHDにおけるマイナスの特性です。

この点に注目した対策がホワイトボードやメモの活用です。

発達障害というと何か劣っているようなイメージを抱く方もいますが、実は通常よりも特化した能力を持っているケースも少なくありません。

そのうちの一つが視覚優位です。

この特徴を活かしてホワイトボードに必要なものや図を書いて説明したり、自分や周囲がメモ帳にイラスト付きのメモをしたりといった対策が有効になるケースも多くあります。

視覚を十分に刺激させることによってADHDの物忘れ対策に役立てられるのは重要なポイントといえるでしょう。

 

チェックリストの活用

最も有効な物忘れ対策がチェックリストの活用です。

子どもの場合は時間割、社会人の場合はスケジュールを作ることで何を準備していないか確認が可能です。
これによって物忘れの軽減につなげられます。

ただ、発達障害の度合いによってはチェックリスト自体を忘れてしまうことも珍しくありません。

そのような時に利用したいのが「if then(イフ ゼン)ルール」と呼ばれるものです。
これは、○○したら××するといった習慣化のためのルールです。

具体的には、「手を洗ったらハンカチで手を拭く」といった行動を決めることをいいます。
ifは場所や状況を、thenは行動を当てはめることでチェックリストを見る習慣づけが可能です。

具体的には、夜歯を磨いたら時間割のチェックリストを見る、仕事が終わって会社を出る前に持ち帰るアイテムのチェックリストを確認するといったものです。

ポイントとしてはifの部分を具体的に記載すること、決めることで、より習慣化がしやすくなります。
最初は失敗ありきですすめ、月単位で辛抱強く続けるようにしましょう。

 

まとめ

発達障害、特にADHDでは物忘れが多く見られる特性もあります。
一方で、今回紹介した対策を実践することによってその困難はある程度軽減させることが可能です。

もちろん、支援する専門家と協力したり周囲の理解や支援も重要なので自分だけで対処することなく、周囲の協力も得ながら自分にあった物忘れ対策を立てることがとても重要です。