子どもの頃は、多くの場合何かしら未熟な面があるのは自然なことでした。
しかし、大人になっても、あるいは発達段階で周りとは何か違うというケースに遭遇することは珍しくありません。
実際、そういったケースでは発達障害と呼ばれる状態になっている場合もあり、問題が深刻になる前に早期発見して適切な支援を行うことで二次障害を予防することができます。
今回は、発達障害の中でも図形認識が困難な障害である視覚認知障害にフォーカスして解説をしていきます。
視覚認知障害とはどのような発達障害なのか
視覚認知障害とは、一言でいえば読み書きが難しい状態です。
さきほど触れた図形認識が困難な状態を始め、次のような症状が見られます。
図形認識の障害
視覚認知障害の代表的な症状の一つに図形認識の障害があります。
これは、円やひし形といった形の模写が困難、完成図のイメージが困難といった障害が良く見られます。
視空間認知障害と呼ばれる原因で発生する症状として知られており、目から入ってくる情報を正確にイメージできない状態が指摘されているのが特徴です。
目からの情報だけでは位置関係や立体的な空間イメージができないため、どちらが上でどちらが下なのか分からないばかりか、左右や前後といった認知もできません。
そのため、図形認識ができず冒頭のような状態を引き落としていると考えられるのです。
地図も読むのが困難なため、場所や目的地を理解するのにも支障があります。
読字障害
読字障害(ディスレクシア)と呼ばれる状態も引き起こしていることがあります。
これは視覚の認知に障害があるため、正確な文字が理解できないことが発生します。
たとえば、「る」や「ろ」の違いが分からなかったり、視線が極端な方向へ飛んでしまって字が終えなったりする状態です。
識字には多くの眼球運動が要求されますが、視覚に障害があると図形認識同様文字も認識できなくなります。
このような状態になると、たどたどしい読み方や文字の読み間違えを引き起こしてしまうのです。
書字障害
書字障害は、字を書くのに支障がある状態です。
鏡文字(左右逆に書かれた文字)や漢字の形がおかしいといった文字を書きます。
子どものうちは、視覚認知が未発達のため、発達障害がなくともこういったケースも度々見られます。
しかし、周りが発達していっても、まったく上達しない場合は視覚認知の未発達による発達障害を引き起こしている可能性があるでしょう。
ただ、パソコンやスマートフォンなどの端末を使えば、きちんとした文章を書き、相手に伝えることが可能な点は特徴的といえます。
片付けに支障
整理整頓ができない人の中にも図形認識に支障がある発達障害の傾向があります。
これは集中力が続かないというケースだけでなく、視空間の認識が弱いために、空間内に特定の道具や物を納められないことで起こっているケースも見られるのです。
ジェスチャーが理解できない
図形認識ができないことで、ジェスチャーが理解できない面もあります。
人と会話を交わすときは表情や身振り、手振りなどから状況を察知することがあります。
しかし、発達障害があると、非言語的コミュニケーションであるジェスチャーが理解できません。
視空間認知ができないために起こる障害とも言われており、自身の会話もジェスチャーに乏しく抑揚のない口調で会話する点も特徴です。
運動に支障
運動も苦手です。
ただ、発達障害でなくとも運動が苦手というケースは多くみられるので、特徴的な点とは言い切れない面もあります。
しかし、視空間の認知が著しく低下していることから、ボールがキャッチできなかったり、ボールが投げられなかったりします。
特に全身を使う粗大運動に支障が出ているケースが珍しくありません。
光過敏
光にも過敏です。
この点は、多くの発達障害の方に共通する症状です。
たとえば、外に出た瞬間に全体が白く見えてしまったり、見るべき対象物とそれ以外の物や景色との見分けができない状態になることもよく見られます。
以上の点が代表的な症状ですが、個々によってそれらの一部しか症状が出ていなかったり、今紹介した症状以外の症状が出ていたりします。
図形認識をトレーニングする試み
発達障害のうち、視覚認知障害の場合は、図形認識を改善する訓練をして状態が良くなる場合もあります。
この図形認識を強化するトレーニングが「ビジョントレーニング」で、50年以上前からアメリカ合衆国で提唱、開発が進められてきました。
ビジョントレーニングは、数字を見つけ出したり、動く物を追ったりなど、さまざまな手法で訓練を進めていきます。
実際に多くの施設で取り入れられつつあり、アプリなどでトレーニングすることも可能になってきました。
本格的な学習をする場合は、トレーニングの認定指導員がいる施設などでトレーニングを受けるのが望ましいとされています。
もし、放課後等デイサービスなどの施設利用を検討している方がいれば、ビジョントレーニングの実施の有無などもチェックしてみましょう。
そうでなければ、本やアプリ、DVDなどを購入して、家族でトレーニングしてみるのもおすすめです。
◾︎図形認識の発達障害が大人で分かったら
図形認識の発達障害が大人になって発覚するということがあります。
専門医の診断を受けたうえで、発達障害が発覚した場合は、公的な支援を受けたり、専門の組織からの支援を受けたりといったことも可能です。
特に昔から字が書きにくい、昔から文字が読めないといったケースでは、発達障害が眠っている可能性も少なくありません。
まずは、発達障害の有無があるかを診断してもらうのがおすすめです。
まとめ
図形認識ができない視覚認知障害は、発達障害の一つとして認知されています。
図形が分からないといった症状を中心にさまざまな支障が発生するのは、視覚認知ができないことが原因とされています。
認知を高めるためには、訓練プログラムが用意されており、それを利用して訓練することも可能です。
図形の認識がおかしいと思ったら、まずは専門医を受診し支援してもらえる状態にするといった行動も重要です。