児童の福祉を担当する公的機関の組織や各種施設、そして事業に関する基本的な原則を定めている法律として児童福祉法があります。
この法律に基づくサービスとして児童発達支援事業が全国で行われています。
児童発達支援事業は、発達の遅れや偏りを示す子どもに対して発達支援していますが、開業を検討する方も決して少なくはありません。
そこで今回は、そもそも児童発達支援事業とはどんなものであり、開業するにはどうすれば良いのかについて解説、案内します。
そもそも児童発達支援事業とはどんな事業なのか?
児童発達支援事業は、一言でいえば未就学児を対象としたデイサービスのような、保育園のようなサービスです。
もともと児童デイサービスという名称で運営されていましたが、児童福祉法と法律が変わり、名称も児童発達支援と変更されました。
障がいを持っている子どもが日常生活において基本的な動作や知識技能を習得することによって、集団生活が送れるようにするサービスです。
こういった能力を獲得することを目的に運営されており、目的の達成のために指導や訓練を適切で効果的に行っていくことが求められます。
対象は未就学児で、学校に通っている児童は放課後等デイサービスと呼ばれる別のサービスの対象になり、区別されています。
障がいを持つ子供は、より早期の支援が重要であり、身辺の自立や社会性の獲得、コミュニケーションを学ぶのに適した時期でもあります。
また、児童発達支援事業は早期から支援をすることで、より効果が出やすいとされており、重要な福祉サービスです。
児童発達支援事業を開業するには?
児童発達支援事業を開業するには、準備と指定を受けるための条件のクリア、指定を受けるといった3点です。
これら3点についてそれぞれ解説していきましょう。
開業準備には法人格の獲得が必要
児童発達支援事業を行うには、一般的な店舗と異なり、指定を受けて初めてサービスができるようになります。
指定を受けるためには法人格を有していることが最低の要件で、NPO法人、社会福祉法人、株式会社や合同会社を設置することが重要です。
これらの法人格をすでに持っているのであれば、定款の事業目的に放課後等デイサービスや児童発達支援事業を行う文言の追加を行いましょう。
そのためには定款変更手続きを進める必要があります。
定款は法務局の登記変更が必要になるので注意しましょう。
必要に応じて児童発達支援事業のイメージに合った商号の変更もあわせて行うのも良いかもしれません。
このように法人格を獲得して児童発達支援事業ができる組織をあらかじめ作っておくことが準備として必要です。
児童発達支援事業の指定を受けることも重要
法人格が用意できたら、児童発達支援事業の指定を受けるために従業員の確保と事務所の確保をすることが求められます。
まず、児童発達支援事業の基準を設けるために従業員の確保をしましょう。
従業員は、管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員等のスタッフ、さらには機能訓練のために機能訓練担当職員を配置します。
管理者は、児童発達支援事業のトップになります。
常勤の管理者を1名以上置く必要があります。
この立場だけであれば資格がなくても問題ありません。
また、児童発達支援管理責任者が兼務しているケースもあります。
児童発達支援管理者も施設に1人以上置く必要があり、こちらは実務経験要件と研修受講要件を満たした人物しか就任できません。
実務経験要件は、障がい者又は児童の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援などの業務における実務経験が3年~10年というものです。
さらに、この実務経験のうち3年以上は障がい児支援・障がい福祉サービス・児童関係である必要があります。
研修受講要件は相談支援従事者初任者研修(講義部分)受講、または児童発達支援管理責任者研修修了していることが求められます。
このように管理者に比べて認定される要件が厳しいものです。
児童指導員等は、実際に子どもと最も接するスタッフです。
保育士や児童指導員、または障害福祉サービス経験2年以上のいずれかのスタッフを最低2人配置しなければいけません。
しかも、このうち半数以上は児童指導員または保育士である必要があります。
機能訓練担当職員は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理指導担当職員の資格があれば対応可能です。
このようにスタッフを集めるだけでもある程度大変といえるでしょう。
事務所の用意も求められます。
事務所とは、児童発達支援事業を行う施設です。
指導訓練室、付随の設備を用意し、それぞれ建築基準法を満たし、消防法で定める消防設備を事務所に備える必要があります。
まず指導訓練室は、児童発達支援事業のメインとなる部屋です。
指導訓練室の面積の指定はありませんが、自治体によって独自基準を設けている場合があります。
この基準クリアに加えて、利用者の訓練に必要な機械器具等を設置しましょう。
付随設備としては、相談室、事務室、そしてトイレや手洗いなどの洗浄設備を用意します。
こちらも基準はありませんが、それ自体を用意しておくことが重要です。
違法な建築か否かを判断する資料として、検査済証および建築確認済証の提出を求めているので、検査済証および建築確認済証を用意する必要があります。
お金があれば、事務所を用意することや管理者の設置まではそこまで困難ではありません。
しかし、児童発達支援管理責任者などスタッフを集めるのがネックで開業しにくいといったケースも見られます。
また、書類作成も多いので、指定を受けるにあたっては行政書士などの専門家のアドバイスを受けながら進めつつ、役所の事前相談をすることも重要です。
このようにして指定を受けることで初めて児童発達支援事業がスタートできます。
まとめ
児童発達支援事業は、未就学児を対象とした施設です。
安易に開業することはできず、行政の指定を受けないと運営できません。
指定を受けるのには、スタッフと事務所、そして法人格が求められ、それらをクリアして初めて児童発達支援事業として運営できます。