発達障害での物忘れはどのようなケースで起こるのか?対策を紹介

発達障害では、物忘れが問題になるケースもときに見られます。

その理由として挙げられるのが、発達障害のタイプの1つであるADHD(注意欠如・多動性障害)によるものです。
今回は、どのような特性によって物忘れが発生するのかといった原因や子どもを生活上どのようにフォローしたら良いのかについて解説します。

進学の準備や仕事、就職などのケースで生かせる方法についても紹介します。

 

発達障害の特性によって物忘れが起こる原因

発達障害、特にADHDの特性によって物忘れが起こる原因として次のようなものが挙げられます。

・前頭前野の機能調節の偏り
・脳内の神経伝達物質の不足

 

前頭前野の機能調節の偏り

前頭前野の機能には判断力や注意力などの調節機能があります。

この機能に偏りが生じることで短期間で集中して記憶する力が弱くなり、ワーキングメモリーと呼ばれる一時記憶能力が低下するのです。
ワーキングメモリー機能が弱まることで、何かを覚えながらほかの作業をするといったことが苦手になります。

このような原因に対しては、脳で記憶する代わりにメモを利用するといった方法が有効です。

・脳内の神経伝達物質の不足
刺激や情報を脳の記憶する部分へ情報伝達をするために「ノルアドレナリン」や「ドーパミン」、「セロトニン」などの神経伝達物質が用いられます。

しかし、ADHDの方はこの物質の量が少ないため、そもそも強い記憶として残りにくいのではといわれています。

このような特性に対しては、ポジティブな経験やネガティブな経験を通じて印象付けることや情報の処理方法について教えるといったことが有効とされています。

 

発達障害の物忘れに対する対処法5選

発達障害の物忘れに対する対処法として次の方法が挙げられます。

・できたことを褒める
・1つの物事(シングルタスク)に集中する
・メモの利用
・チェックリストを使う
・優先順位の指導

これらについて解説しましょう。

 

できたことを褒める

主に発達障害を持つ子どもに対して行う方法です。できたことは積極的に褒めるようにします。
褒めることによって、本人の自己肯定感が高まり、自分の行動に対する自信に繋がります。

できたことをより多く行うようになる可能性もあり、ポジティブな影響が期待できるでしょう。

職場においても、こういった方法はADHDの社員に対して有効であるケースも少なくありません。

 

1つの物事(シングルタスク)に集中する

発達障害でない方にも共通することですが、マルチタスクになると混乱し物忘れがひどくなります。

発達障害の方の場合、それがより顕著になるため、なるべくシングルタスクで、ひとつずつ行ってもらうといった対策を取ることが有効です。

 

メモの利用

メモを利用するのもおすすめです。ADHDの方の場合、物忘れがより顕著になります。

そのため、メモなどを利用して必要なものをイラストで示したり、社会人の方であればメモを取ったりすることで視覚的に必要なものがわかることがあります。

 

チェックリストを使う

チェックリストを使うのも有効です。
忘れ物がないか、行っていないことがないかどうかのチェックリストを用意して、物忘れを防ぎます。

たとえば、持っていくものをメモすることで、必要なものか不要なものかを判断するトレーニングにもなります。
子どもの場合、いきなり単独で行うのは難しいので、まずは保護者や施設のスタッフなどと一緒に対応するのがおすすめです。

 

優先順位の指導

優先順位を教えることも大切で、マルチタスク状態になった場合でも、何を最初に行えばいいか説明することで物忘れを減らして、適切な行動が取れるようになります。

 

発達障害の物忘れで望ましくない対応

発達障害の物忘れに対して望ましくない対応もあります。
それは、次の3点です。

・安易に叱責する
・忘れ物を用意して渡す
・無視して後始末する

 

安易に叱責する

つい行ってしまいがちなのが、安易な叱責です。
なぜ忘れたのか、どう責任を取るのかなど、叱責を行うことは、発達障害のある方に対して物忘れを悪化させる原因になります。

叱責をされると、発達障害の方でなくとも多かれ少なかれ動揺します。
この動揺によってさらに物忘れが起こったり、感情に流されてすべきことを忘れてしまったりするのです。

特に発達障害がある場合は、より顕著になることが多く、悪化させる原因となるので、これまでに紹介した方法を参考に対処しましょう。

 

忘れ物を用意して渡す

忘れ物を用意して渡すという方法は、一見は発達障害を持っている方に対して望ましい行動のように思えます。
しかし、本人に対して物忘れをしてしまった事実や、自分が困ってしまう結果になるという事実を印象付けられなくなってしまうのです。

物忘れをゼロにはできませんが、自分が困る経験をしたことで改善する意欲を促すことにもつながり、改善のための行動を起こす可能性があります。

物忘れで深刻な状況になるといった場合は、フォローも大切ですが、すべて周囲が代わりに行ってしまうということがないようにしましょう。

もちろんこれまでに紹介した対策と並行して行うことがおすすめです。

 

無視して後始末する

関わると疲れるという理由から、無視して後始末をしたり、放置してしまったりといったことも良くありません。
確かに発達障害がある場合、ほかの人に比べて物忘れは多いといえます。

しかし、対策を立てたうえで、自分でも物忘れに対して向き合ってもらい、成功と失敗を繰り返すことで改善が期待できるのです。

一方で、放置したり、無視して後始末をしたりすると成長の機会を奪うことになるので、できる限りそういった方法を取らないようにしましょう。

 

まとめ

ADHD(注意欠如・多動性障害)の困りごととして物忘れが挙げられます。

これは一つのことに夢中になってしまっていたり、興味を喪失していたりといったことが原因で発生する場合があります。
今回は、その原因や対処法を中心に解説しました。

マルチタスクなどを避けるようにしたり、原因を把握したうえで対処したりすることで対応できる場合も少なくありません。
そのため、まずは原因の追及を行い、無理なタスクをさせないといったことを中心に対処しましょう。