感覚を刺激して子供の発達を促す遊びの方法と発達支援の役割

児童発達支援センターを始めとした発達支援の事業所では
言葉の遅れや日常の活動のやりにくさを抱えているお子様のために
作業療法や感覚統合療法などを実施しています。

中でも遊びを交えて感覚統合をしていくことで
出来ることが少しずつ増えていくという効果が期待でき
遊びは家庭の中でも楽しみながらできるという利点があります。

そこで感覚統合のために有効な遊びのアイデアなどについてご紹介します。

 

私たちの五感以外の感覚「触覚」「固有受容覚」「前庭覚」

感覚は身体の外から受け取る刺激や情報のことを指します。

感覚で良く知られているのは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の「五感」です。

感覚には五感以外に
「固有受容覚」と「前庭覚」があり、身体をコントロールする上で重要なものです。

 

触覚

触覚は自分で触ったり、人に触られたりすることを感じる感覚で、皮膚から感じ取ります。
尖ったものを触った時の痛み、柔らかいものを触った時の感覚、水を触った時の温度などを感じます。

触覚には主に
・情緒を安定させる
・防衛する
・識別する
・身体と環境の関係性を把握する
という働きがあります。

 

固有受容覚

固有受容覚は身体の位置やはたらき、力の入り具合を感じる感覚です。
筋肉や関節を使って感じます。

固有受容覚は主に
・力を加減する
・運動をコントロールする
・重力に抗して姿勢を保つ
・バランスをとる
・情緒を安定させる
・ボディイメージの発達を促す
働きがあります。

 

前庭覚

前庭覚は身体の傾きやスピード、揺れ、回転を感じる感覚です。
耳石器と三半規管で受容しています。

前庭覚は主に
・覚醒を調整する
・重力に抗して姿勢を保つ
・バランスをとる
・眼球運動をサポートする
・ボディイメージの発達を促す
働きがあります。

 

感覚が統合されるとできることが増える

これらの感覚は統合されることでさまざまなことができるようになります。

例えば「良い姿勢で座る」という動作は
前庭覚のバランス感覚と固有受容覚の重力にあらがう力を両方使うことでできる動きです。

私たちの何気ない日常動作は複数の感覚が統合されて行っています。

発達障害を持っているお子様はこれらの感覚が感じにくかったり逆に敏感だったりします。
そこで日常動作や遊びを通じて感覚を養い、統合をはかります。

上手に日常生活ができない、運動などの動作が苦手など
お子様の特性に応じて遊びを通じて繰り返し行っていくことで
出来ることが増えていく効果が期待できます。

 

感覚を統合させるあそび

 

触覚を刺激するあそび

・砂場遊び
・泥遊び
私たちは生活の中で手で物に触れ、手触り等からさまざまな情報を受け取っています。
感覚を育む遊びは砂遊びや泥遊びの他にも工夫次第で家の中でも行うことができます。

例えば感覚が過敏なお子様には
サラサラとしていて乾いた質感のものを触る遊びから始めていくのがおすすめです。

ビーズやドングリなどの木の実のほか
小豆や大豆などの豆類をバットなどの平たい容器に出し、手触りを楽しみます。

さまざまな形や感覚を楽しめると
より良いので色や形状にバリエーションがあるショートパスタでも良いでしょう。

そのほか、ビニール袋にお水やぬるま湯を入れ、タプタプとした感覚を楽しんだり
粘土で遊ぶのも手先の感覚を刺激します。

慣れてきたらスライム遊びにチャレンジしてみます。
スライムを一緒に手作りしてみるのも良いでしょう。

 

固有受容覚を刺激するあそび

・ボール遊び
・トンネルくぐり
・積み木遊び
固有感覚を刺激する遊びでは力を加減したり運動をコントールしたり姿勢を保つ働きを練習します。

ボール遊びではまずはボール運びから始めます。
ボールを運んでくる、他の人と手と手や体で挟んで一緒に持つなど、落とさないように持つ練習をします。

また、ボディイメージの発達のためにトンネルくぐりも有効です。
トンネルくぐりは机をくぐるなど家の中のものを活用することもできます。

さらに積み木遊びで積み木を重ねるときにゆっくりと手を動かす
慎重に積み木を積み上げるなどの遊びも取り入れることができます。

 

前庭覚を刺激する遊び

・ブランコ
・ジャングルジム
・滑り台
など

前庭覚(平衡感覚)は揺れ、傾き、重力、スピード感などを感じる感覚のことです。

前庭覚を使った遊びはバランスボールに座ったり、ブランコに乗ったりすることで刺激されます。

前庭覚につまずきのあるお子様はブランコを怖がることも多いので
最初は大人と一緒に短時間だけ乗ることから始め
継続して少しずつ時間を延ばしたり1人で少し乗ってみたり少しずつ計画をたてて行っていきます。

姿勢を維持するのが難しいお子様の場合は
籠に入れて乗るタイプのブランコや
家の中でハンモックなどを使って揺れる感覚を体験すると良いでしょう。

 

発達支援では専門家が認知・学習・感覚面のサポートを行う

発達支援では作業療法士がさまざまな支援を行います。
日常生活や認知、学習、感覚面など発達の状態に合わせてサポート・治療を行います。

日常生活のサポートでは児童が楽しく取り組めるように
ボールや積み木、ままごとなど興味を引くような遊びの中で
道具の使い方や身体の使い方を学んでいきます。

また、子どもは揺れる、触る、回る、跳ぶなど、さまざまな感覚を経験し
統合されることで環境に合わせて自分の身体を自由に動かし
落ち着いて課題や学習に取り組めるようになっていきます。

発達支援の現場ではブランコ、滑り台、砂場遊び、粘土などの遊びを通して
楽しみながら色々な感覚を調整できるように支援していきます。

 

それぞれの児童に合わせた内容の支援を行うことが大切

発達支援ではお子様の特性や環境に合せた援助を行うことが大切です。

発達障害によってもたらされる症状や困りごとは人それぞれ異なり
お子様本人の性格や好みもそれぞれ異なります。

発達障害を持つお子様の支援を行う際には
お子様本人と保護者との面談や観察から得られた情報により
問題の原因や支援方法を考えます。

そしてお子様へのサポートや環境の調整等を行い
その結果を踏まえて支援のやり方を変えたり改善したりします。

それぞれのケースに合わせて援助を行うのが発達支援の役割ですので
おうちでの遊びや過ごし方について疑問に思うことは相談してみると良いでしょう。

お子様の特性に合った遊びを通して楽しく感覚を刺激していき
定期的に専門家に相談するのがおすすめです。